あなたも170mmですか?ロードバイクのクランクの長さの選び方と効果のまとめ

Vitess Dura-Ace Crank

ロードバイクに乗り始めてくると気になってくるのがポジションです。自分の適性ポジションでロードバイクに乗ることができれば、より快適でスピーディーな走りの実現が可能になります。

ポジション出しのためにサドルやステムの位置、高さを調整した次に気になってくる点がクランク長だと思います。

日本で販売されているロードバイクの完成車に付いてくるクランクはほとんどが170mmです。

それはクランクの選び方の指標の1つとして言われる、身長の10分の1の長さのクランクが適性であるという理論に基づき、日本人男性の平均身長である172cmを考慮して選ばれたのが、万人受けしやすい170mmという長さだからです。

ちなに私が現在住んでいる北米の完成車に付いてくるデフォルトのクランクは172.5mmが一般的です。

Shimano製品であればクランクは165mmから180mmまで2.5mm刻みに異なる長さのクランクが販売されています。

このクランク長の面白いところは、長さによってパワーやスピードに影響が出ると言われ、様々な論争・研究が行われていることです。今までは短いクランクのほうが回転が上げやすく、長いクランクのほうがテコの原理でトルクをかけやすいため、TTには短いクランク、ヒルクライムやスプリントには長いクランクが向いていると言われてきました。

ロードレースやトライアスロンを趣味とする私にとってクランクの長さの影響で少しでもパワー出力が上がって速くなるのなら、自分の使用目的に合ったクランク長を選びたいと思い、ここ最近はクランク長に関することばかり調べていました。

ここまで調べて興味深いと思ったクランク長による効果を今回はまとめてみます。

まずはクランクの長さの選び方

a meter and a half

適性なクランクを選ぶ際に参考になる指標がいくつかあります。

身長の10分の1

まずは今まで言われてきた身長の10分の1のクランクを選ぶというもの。

ただこれは身長180cm以上のヨーロッパのプロサイクリストたちが175mm前後のクランクを使用することがあったり、逆に身長の低い選手が長いクランクを使用することもあるため、最近は参考にならないと言われています。

身長の9.5%

グレアム・オブリーというフライング・スコッツマンの異名を持つ、90年代に活躍したイギリス出身の異色の元選手が推奨する指標がこちら。

身長の9.5%かそれ以下のクランクを選ぶというものです。例えば身長180㎝の人の場合、その身長の9.5%は171mmで、市販のクランクだと170mmが最適なクランクになります。

股下x1.25+65

股下から適性クランク長を出すというもの。

その公式が股下x1.25+65で、股下が85cmの人の場合は171.25が公式からでるため、170mmか172.5mmを選ぶという感じです。

同じ身長の人でも股下の長さは異なるので、身長をベースにしたクランク長の計測よりもより的確な感じがします。

TT(タイムトライアル)サイクリストには短いクランク

TTをメインで行うサイクリストやトライアスリートには短いクランクが最近は推奨されています。

その理由としては回転のし易さや、サドルを2.5~5mm高くすることが可能なためより深い前傾姿勢が取れる、つまり空力性の向上などが挙げられます。

トッププロの選手もTT用に短いクランクを使用することがあるようです。

現状よりワンサイズかツーサイズ下の長さのクランクの使用を試みてみると良いかもしれません。

クライマーやトルク派には長いクランク

テコの原理にあるように、力点から支点までの距離が長ければより少ない力で大きなものを動かすことができます。

ロードバイクの場合はクランクの長さが力点から支点までの距離にあたり、より長いクランクのほうが小さい力でペダルを回すことができるため、重いギアを踏めるようになるという理論です。

そのため、ヒルクライマーや重いギアでトルクをかけて走るトルク派のサイリストには長いクランクが良いと言われています。

山岳ステージに強く、2015年のツール・ド・フランスでは総合2位と大活躍をしたコロンビア出身のナイロ・キンタナ選手。169㎝と小柄ながらも172.5mmのクランクを使用しているのも、長いクランクの利点を得たいからかもしれません。

結論:適性クランクの選び方は人によって

結局クランクの長さをどう選べば良いかというのは、その人のサイクリングスタイルによると思います。

フィッティングサービスを利用して客観的な意見を求めたり、自分の用途に合った長さのクランクを試してパワー出力やタイムを参考に効果の違いを調べるなど、試行錯誤の中から選ぶのが一番だと思います。

また、きちんとポジションを出しているのに膝の痛みが残るという人や、柔軟性が低く体の固い人などは、短いクランクを試すというのも良い選択肢だと思います。

ここまで少し長くなりましたが、クランクの長さに関する効果の違いを今からまとめて行きたいと思います。

短いクランクが与える効果

Fabian Cancellara

最近は短いクランクの利点が注目され、UCIワールドチームの中でもトップクラスのチームスカイが170mm以下のクランクの使用をテストしているそうです。

クランクの長さが変わることによるスピードやパワーへの影響の違いを短いクランクから見ていきます。

エアロ効果が上がる

クランクは短くなればペダルの下死点が上がるため、その分サドルを上げることができます。

サドルが高くなればなるほど、上半身がより地面に対して水平になるため、空力性が高まりエアロ効果がアップします。

呼吸が楽になる

クランクが短ければペダルが上死点に来た時の膝の位置が下がるため、腹部への圧迫が少なく呼吸がしやすいというメリットに繋がります。

高いケイデンスを維持できる

高いケイデンスの維持には短いクランクが効果的です。

低いトルクで回しても高いケイデンスでスピードを保つことができ、膝への負担の低減にもつながります。

膝や関節に優しい

短いクランクであれば股関節、膝、足首の可動範囲が狭くなり、故障のリスクが減るようです。

膝の痛みに悩んでいる方は今よりも1~2サイズ短いクランクを選んでみるのも良いかもしれませんね。

パワー出力が極端に下がるわけではない

120~220mmまでの長さが極端に異なるクランクで最大パワー出力のテストを行った結果、適性クランクと最も適性ではないクランクの最大出力の違いは4%以下に収まったようです。(詳しくは後述)

そのため、2.5~5mmの違いではそこまで大きな違いは生まれないようです。

短いクランクの利点を得つつも、パワー出力もそこまで下がるわけでは無いというのは嬉しいところです。

長いクランクが与える効果

Le Tour de France - Stage 2

劇的な効果があったり、しっかりとしたリサーチがされているわけではありませんが、一般的に長いクランクにはこのような利点があると考えられています。

クライミングに適している

すでに触れたとおり、高トルクでぺダリングができる長いクランクは、クライミングに有効だとされています。

ダンシングに有利

ロードレースのゴールスプリントで見るようなダンシング(立ち漕ぎ)の状態では、長いクランクのほうがパワー出力が出ると言われています。

ただ、競輪のゴールスプリントのようにシッティングの状態でのスプリントではクランクの長さはパワー出力に影響しないようです。

今までの常識を覆した海外の論文

DSC03944

アメリカ、ユタ大学のジム・マーティン博士が2001年に発表した、クランクの長さとパワー出力、ケイデンス、ぺダリングスピードに関する論文では、複数のサイクリストの協力を得てクランクの長さによる効果の差をリサーチしました。

使用されたクランク長が120、145、170、195、220mmの5種類で、長さにかなり開きがある面白い実験です。

実験の内容は参加サイクリスト達が5種類の異なる長さのクランクを用いて、5分のウォーミングアップの後、全力スプリントを各クランクごとに4回行い、データを収集します。

その結果がこちらです。

Photo:Determinants of maximal cycling power

極端な長さの120mmと220mmは最大の出力を記録した145mmのクランクに対してわずか3.9%の出力の低下に収まったようです。そして、中間に位置する195mmのクランクは145mmのよりも1.6%の出力低下しか記録されませんでした。

標準的な170mのクランクを背が非常に高い、もしくは非常に低いサイクリストが使っても、パワー出力の差は最大で0.5%程度の低下にしかならないようです。

クライミングやダンシング中の計測ではないため何とも言えませんが、TTやロードレース時にはクランクの長さがタイムに影響することはなさそうです。

まとめ:クランク長という沼に1週間はまってみて

170と172.5mmのクランクの使用経験がある私。自分の体形や柔軟性を考慮した上で、可能な限り長いクランクを使ったほうが今まで良いと思っていました。

しかしショートクランクというトレンドもあり、機材による1%以下の細かなパフォーマンスにこだわるプロ選手で無ければあまりクランクの長さに神経質にならないで良いのではと今回思いました。

ここまで調べてみて思ったのは、やはりクランクを長くしただけで急にカヴェンディッシュのようなスプリント力は得られないということですね。

というよりも、身長175cmのトップスプリンター・カヴェンディッシュが使用するクランクは170mmで、日本で一般的なクランク長と変わりません。

ホビーサイクリストとしては、わずかな出力アップのためにクランクという安くない投資をするよりも、膝などの問題の改善のためにクランク交換をすることが優先なんではと思いました。

またヒルクライムやダンシングとクランク長によるパフォーマンスに関する研究がもっとあれば嬉しいところですね。どなたかご存知の方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください。


コメント