エアロダイナミックを求めるサイクリストなら絶対知りたい!スペシャライズドの風洞実験動画まとめ

In the Wind Tunnel

自転車に乗っている人、特にレースをしている人や、グループライドをしている人にとって、いかに空気抵抗を減らすかというのは永遠のテーマ。

自転車の走行時には機材や路面からの抵抗もありますが、時速30㎞を超えたあたりから全抵抗の内およそ8割以上が空気抵抗となるように、自転車と空気抵抗は切っても切れない関係にあります。

空気抵抗は速度が増せばそれに比例して高まるので、より速いスピードを求めるサイクリストにとって、高い空力性を求めることは重要な課題です。

エアロホイールを買ったり、ポジションを見直したり、フィット感の高いジャージやスキンスーツを選んだりと様々な工夫を凝らすことが出来ますが、その工夫が実際どれだけの空気抵抗の低減に役立っているのかは中々測定が難しいところ。

そんな数値化された効果を測定するための施設がウィンドトンネル、風洞実験設備です。

スペシャライズドの風洞実験シリーズ~AERO IS EVERYTHING~

specialised

アメリカの自転車ブランド、スペシャライズド。グランツールでもおなじみのアスタナやサクソ・ティンコフと言ったチームに機材提供を行う一大ブランドの一つです。

最近ではツール・デ・フランドルを制したペーター・サガンもティンコフの一員としてスペシャライズドのバイクを使用しています。

そんなスペシャライズドがカリフォルニア州のモーガンヒル市にある本社内に建設した自転車用の低速ウィンドトンネルにて、空力性のテストを行うのがエアロ・イズ・エブリシング(エアロが全てだ)というシリーズです。

様々なライダーからのこれはどうなの?という疑問を取り上げて自社設備でテストするという気になる内容が満載のシリーズで、初めてこのプログラムを知った時には、全動画を一気に観てしまいました。

そんなエアロ・イズ・エブリシングシリーズの中から、ロードバイクに関係のある動画を全てピックアップしたまとめを今回はご紹介したいと思います。

少しでも速く走りたいと思う人には必見の内容です。

またスペシャライズドでは一般からの質問も受け付けているので、ツイッターで「#aeroiseverything」のハッシュタグをつけて気になる疑問を問いかければ、あなたの疑問を実験してくれるかもしれません。(質問は英語でどうぞ)

いきなりまとめ

1つ1つの動画の内容を簡単にまとめても、かなり数があるため長文になってしまいました。そのため、最初にまとめをご紹介します。

ほとんどの実験で40㎞あたり何秒速くなるというような効果の表記をしていますが、これは出力が何ワット抑えられる、空気抵抗係数がこれだけ低くなるというような数学的な表現を避けるため、何秒速くなるという分かりやすい表現にしているようです。

では、時速何キロの場合?と疑問を持ってしまいますが、スピードに関係なく空気抵抗係数が同じであれば、短縮できる時間の合計はある程度同じようですので、時速何キロの場合と言った説明の形はとっていないようです。

英語ですが、詳しい説明はこちらの動画を

それでは、ここからがまとめです。

簡潔にまとめてみましたが、これらの内容があなたの走りの改善に役立つと嬉しいです。詳しくは以下の解説をご覧ください。

低速域の空気抵抗 -Aero At Slow Speeds-

こちらは個人的に非常に気になるテスト。時速20㎞のような低速域でも空気抵抗の違いはあるのかという内容です。

実験方法は、ブラケットポジションと下ハンドルポジションの空気抵抗の違いを時速50㎞、そして時速20㎞の2つの速度でテストし、その違いを比較するものです。

結果

驚くことに大きな違いは無く、時速50㎞でも時速20㎞でも下ハンドルポジションのほうが、空気抵抗が15%低減するようです。

ただ、乗り手の体感としては高速域のほうがより大きな空気抵抗の差を感じられるようですが、時速20㎞の場合と大きな違いは無いようです。

ホビーライダーにも嬉しい結果ですね。

ちなみに、この結果は平地での巡航を想定したもので、斜度6%のような登りの場合は空気抵抗よりも重力に逆らって進むという抵抗が大きくなるため、エアロダイナミクスが与えるスピードへの影響はぐっと小さくなるようです。

動画

The Win Tunnel – Aero At Slow Speeds

ケイデンスによって空気抵抗は変わるか -Cadence-

重いギアをごりごり踏むトルク派、そして軽いギアで高いケイデンスを維持する回転派など、ぺダリングのスタイルは人さまざま。

そんなケイデンスによって空気抵抗は変わるのか、というのは非常に気になるところ。イメージ的には回転派のほうがトルク派よりも空気抵抗を受けそうです。

このテストでは同じバイク、機材、そしてサイクリストという条件で、ケイデンス50回転と100回転の場合の空気抵抗の違いを測定。

結果

ケイデンスの違いが空気抵抗に影響することは無いようです。

理由としてはペダルを回転させる際の足の上下運動は、空気が前方から後方に流れる時間よりも長いため、ケイデンスが与える空気抵抗はごくわずかなものになるからだそうです。

動画

The Win Tunnel: Cadence

どんな靴を選んだほうが良い? -Which Shoes Should You Choose?-


(S-works サブシックス)

シューカバーが空気抵抗に与える影響があることから、シューズと空気抵抗の関係はサイクリストとして気になるところ。

通常のダイアル式やベルクロ式(マジックテープ)などの一般的なロードシューズと、S-worksのサブシックスというシューカバー付きの靴紐で締め上げるスペシャライズドのモデルとの比較です。

結果

結果はサブシックスのほうが40kmあたり35秒速いそうです。ロードシューズは靴の表面のおうとつが少ないほうが空力性に優れているようですね。

動画

The Win Tunnel: Which Shoes Should You Choose?

ドラフティング位置 -Drafting In a Pack-

集団が2列で走行している時に自分が最後尾にいた場合、どちらからの列の真後ろにいたほうが良いのか、それとも2列の中間を走れば良いのか。空気抵抗を最大限に抑えるためにはどちらが最善かということについての実験です。

結果

2列の中間にいる場合の空気抵抗の低減は40%、それに対していずれかの列の真後ろについた場合は空気抵抗の低減が45%になったようです。いずれも独走時との比較です。

結果としては常に前方のライダーの真後ろに付くというのが、最善の選択ということですね。

動画

The Win Tunnel: Drafting In a Pack

ドラフティング距離 -The Effects of Drafting-

前方のライダーとの距離による空気抵抗の違いを比較した今回のテスト。

結果

前方のライダーの真後ろで走った場合は50%の空気抵抗の低減が。そして、自転車3台分ほど離れた場合でも20%の低減に効果があるようです。

さらに、自分が先頭にいる場合でも後方にライダーが付いている場合は4%の空気抵抗の低減に効果があるようです。TTヘルメットが持つロングフィンのような効果ということでしょうか。

別のテストでも7m離れた状態でも10%ほどの空気抵抗に低減に役立ち、わずかながらも10mという距離でも違いが生じるということですので、見た目以上に空気抵抗は様々な影響を与えるんですね。

動画

The Win Tunnel: The Effects of Drafting

ドラフティング時のハンドルポジション -Do Aerodynamics Still Matter in a Pack?-

これは個人的には非常に興味がある内容。集団走行中にもエアロ効果はあるのかというテストです。

実験の内容としては、ドラフティング時にハンドルバーのブラケットと下ハンを握った場合の比較をしています。

結果

まず単独走行時では下ハンを握った場合は13%の空気抵抗の低減に効果がありました。そして肝心のドラフティング時はブラケットに対して下ハンのほうが19%の低減に効果があったようで、単独走行時以上のエアロ効果があるようです。

集団走行時、特にレース中は積極的に下ハンドルを握って体力と足の温存、そしてパワー出力の低減に努めようと思える結果です。

動画

The Win Tunnel – Do Aerodynamics Still Matter in a Pack?

下り:ペダルは回すべき? -Descents: To Pedal or Not ?-

下り坂を走る時にペダルは回し続けていたほうが、それともペダルは回す必要はないのかという比較です。

比較する項目はこちら。

1:ペダルを回し続ける
2:ペダルを回さず、ペダルが上死点と下死点にある状態
3:ペダルを回さず、ペダルが3時と9時にある状態(足が水平)

斜度6度の下りを想定してテストをしました。

結果

1の場合は時速59㎞弱、2の場合はそれよりも時速1㎞遅く、3の場合は1の場合はよりも3%速い時速59㎞という結果になりました。

下りで時速50㎞以上のスピードに乗ったらペダルを回さずに水平に保つ状態にすることが効果的ですね。

動画

The Win Tunnel – Descents: To Pedal or Not ?

理想的な下りポジション -The Perfect Tuck-

坂道を下っている時はどんな体のポジションを取るのが一番速いかというテスト。

1つ目のポジションは通常のドロップハンドルを握っている時よりもやや前傾姿勢。

2つ目のポジションは、お尻はサドルに乗せたまま、両腕はハンドル上部において脇をぐっと閉めている状態。

3つ目はトップチューブに座ってドロップハンドルを握るという、ピーター・サガンのような選手が下りで取るポジションです。

(ぜひ動画でもポジションを確認してみてください)

結果

ペダルを回していない状態で斜度6%の下りを想定した結果がこちら。

1は時速61㎞、2は時速64㎞、3は時速68㎞。

3のポジションはスピードは出ますが、アメリカの元ナショナルチャンピオンでもコントロールは容易ではないと言っているので、状況によっての使い分けが必要かと思います。

また公道でのスピードの出しすぎは危険ですので、交通規制中のレースで使うなど、下りは無理をせず安全なスピードで走りましょう。

動画

The Win Tunnel – The Perfect Tuck

スチールはエアロダイナミック? -Steel is Real but is it Aero?-

今回は1980年代に作られたスチールフレームのロードバイクとスペシャライズドのエアロバイク、ヴェンジ(旧モデル)との比較です。

結果

スチールバイクはヴェンジよりも40㎞あたり50秒速くなるようです。

最新のヴェンジとの比較があればいいんですが、意外とそれほどまでに大きな差は無いことに驚きました。

古いロードでもコンポがしっかりしていれば、スキンスーツやエアロヘルメットを着用することで十分レースにも使えるかもしれませんね。

動画

The Win Tunnel: Steel is Real but is it Aero?

ディスクブレーキ対リムブレーキ -Disc vs Rim Brakes-

ディスクブレーキと一般的なリムブレーキの空気抵抗の違いをテストしたのがこちらの動画。

真正面からの向かい風と横風の2つの比較を行っています。

結果

真正面からの向かい風の場合はスピードに差は与えないようです。それに対して、横風の場合はディスクブレーキのほうが40㎞あたりで8秒遅くなるようです。

動画

The Win Tunnel: Disc vs Rim Brakes

どのアップグレードが効果が良い? -What’s an Upgrade Worth?-

ウェア、ヘルメット、ホイール、そしてフレームの4つをエアロ機材に変えると、どのアップグレードが効果が高いかという実験です。

結果

  • ダボついてるウェアから体にピッタリ密着したウェアに変えると45秒速い
  • ロードヘルメットからセミエアロヘルメット(イヴェード)に変えると42秒速い
  • 通常のリムハイトの低いホイールからディープリムホイールに変えると34秒速い
  • 通常のフレームからエアロフレーム(ヴェンジ)に変えると59秒速い

いずれも40㎞あたりの時間短縮効果です。ホイールとフレームの効果がそこまで高くないのは向かい風でのテストで、一般的なヨー角15~20度の状態や横風にはより大きな効果が期待できるようです。

それでも費用的にヘルメットとウェアを見直すだけでも高価なエアロホイール並みの効果を得られるというのは嬉しい発見ですね。

動画

The Win Tunnel: What’s an Upgrade Worth?

足のムダ毛処理を剃ると速い? -Shaved and Dangerous?-

Lady Katherine

こちらはスペシャライズドのシリーズの中でも有名なテスト。足のムダ毛を剃ると速くなるのかという内容です。

すね毛が無い状態だと空気抵抗に良いと言われてきましたが、それまでに自転車に適した低速の風洞実験設備でのテストが行われてこなかった内容なので、どのような結果が出るかは全サイクリストにとって気になるところです。

結果

6人のサイクリストで実験を行ったところ、40㎞あたりの走行を仮定して最も高い効果を得た人が82秒、そして最も低い効果の人でも50秒の時間短縮に効果があったようです。

6人の実験結果の平均は70秒で、ディープリムホイール以上の効果をなんと足のムダ毛が無いだけで得ることができるようです。

動画

The Win Tunnel: Shaved and Dangerous?

髭は剃るべきか -To Beard or Not to Beard-

日本では髭がもっさりというローディーは少ないと思いますが、北米では日本以上に髭の人を多く見かけるため、たまにサイクリストでも見かけるもっさりとした髭。

その髭がスピードに与える影響はどうなんでしょうか?

結果

結果は40㎞あたりの走行でも1秒以内の違い、というほとんど空気抵抗に与える差は無いようです。

動画のサイクリストは中々の髭の量ですので、無精ひげ程度であればスピードに与える影響はほとんどないでしょう。

動画

The Win Tunnel: To Beard or Not to Beard

髪はどう結ぶ? -When is a hairdo a hairdon’t?-

こちらは女性に嬉しいテスト。空気抵抗に良い髪の毛の結び方を比較しています。

テスト内容は。

1:一つ目は髪の毛を結ばずに下したまま
2:ポニーテール
3:お団子
4:三つ編み

結果

1~3はどれも大きな違いは無いようです。4の三つ編みは髪の毛を下したままに対して40㎞あたり14秒の時間の短縮に役立つことが分かったようです。

髪の毛の長い女性は、サイクリング時は三つ編みにして走ると良いかもしれませんね。

動画

The Win Tunnel: When is a hairdo a hairdon’t?

サイコンのマウント位置 -Computer Mounts-

Cruising towards Altastenberg

あなたのサイコンはどこにマウントしていますか?ステムの上、もしくは上の写真のようにハンドルと水平になるように設置する2通りが一般的だと思います。

この動画では、サイコンをロードバイクに付けない、サイコンをステムにマウント、そしてハンドルとサイコンを水平にマウントした3つの状態での空気抵抗を比較しています。

結果

サイコンをステムにマウントした場合はサイコンをロードバイクに付けない状態よりも40kmあたり8秒遅くなるようです。

それに対してハンドルとサイコンを水平にマウントした場合、サイコン無しの状態との空気抵抗の違いは無いようです。

ごくわずかな違いですが、サイコンはハンドルと水平になるように設置したほうが良さそうですね。

動画

The Win Tunnel: Computer Mounts

カメラのマウント位置 -Camera Mounts-

スポーツカムを付けて走っているという人は最近多いですよね。特にレースの記録にスポーツカムを購入したという人も多いんではないでしょうか?

今回はスポーツカムをどこにマウントするのが一番速いのかというテストの内容です。

結果

ベースとなるのはヘルメットの上部にGoProを付けた状態。それに対してハンドルバーの上部に付ける場合は40㎞あたり8秒速く。そしてハンドルバーと平行にして付ける場合はヘルメットと比べて40㎞あたり14秒速くなるようです。

サイコンのマウント位置と同じ結果になりましたね。

動画

The Win Tunnel – Camera Mounts

最も速いボトル位置 -The Fastest Bottle-

ローディーの必須品と言えるボトルは水分補給に欠かせないアイテム。今回はそんなボトルをどこにキープするのが最も速いかというテストです。

ダウンチューブのボトルホルダー、シートチューブのボトルホルダー、そしてサイクルジャージの背中のポケットという3つの異なる場所に入れた状態でのスピードの違いを比較します。

結果

1位:サイクルジャージ、2位:ダウンチューブ、3位:シートチューブ

シートチューブに入れたボトルが一番遅く、サイクルジャージに入れた時よりも40㎞あたり38秒遅いという結果に。

そしてダウンチューブに入れたボトルはシートチューブよりも25秒速いようです。

1人で走る時やロードでタイムトライアルを行う時などは背中のポケットにボトルを入れるという選択肢もありだと思いましたが、やはり一般的なダウンチューブにボトルホルダーという組み合わせが一番ということが分かりました。

動画

The Win Tunnel ? The Fastest Bottle

アイウェア -Eyewear-

スポーツ用やカジュアルなサングラス、そしてその他のアイウェアがスピードにもたらす違いをテストしたのがこちらの動画です。

結果

スポーツ用のサングラスとカジュアルなタイプのサングラスには空気抵抗の差が無いようで、スキー用のゴーグルを着用した場合もスポーツサングラスと比べて40㎞で4秒遅くなるというごくわずかな違いに収まりました。

アイウェアとスピードには大きな関係が無いようですね。

動画

The Win Tunnel – Eyewear

勝つためのピン -Pin it to Win it-

原題は「勝つためには全開で」と言う意味の表現で、ピンというキーワードが入っているように、レースでゼッケンをジャージに留める場合は安全ピンを4本使ったほうが良いか、それとも8本使ってよりジャージにより密着させるほうが良いかというテストです。

ゼッケンの角4か所をピンで留める方法と、さらに各辺の中間の4か所にもピンを留めた合計8か所のピンのスピード比較です。

結果

8つのピンを使った場合は4つのピンよりも40㎞あたり9秒速くなるようです。

少し手間はかかりますが、ピンを8本使って体に密着して留めるようにしたほうがレースには良さそうですね。

動画

The Win Tunnel – Pin it to Win it

勝利のための服装 -Dress for Success-

少しダボついているジャージからレースフィットのような体にぴったり合うジャージに変えた場合はどのくらいのスピードの変化があるのかという実験。

結果

40㎞あたり冬用のジャージは83秒、夏用のジャージは91秒速くなるようです。

ジャージを選ぶ際は少しでも体にぴったりと密着したものを、通常よりもワンサイズ下のジャージを選択することが良いかもしれませんね。

フィット感の高いジャージを選ぶことで、数十万円のエアロホイール並みの効果を得られることが動画で紹介されているように、ジャージ選びはかなり重要な選択のようです。

動画

The Win Tunnel: Dress for Success

季節の服装比較 -Comparing Seasonal Kits-

夏のサイクルジャージと比べて冬はどうしても防寒のために着ぶくれしてしまうもの。それが与えるスピードへの影響をテストしたのが今回の実験です。

結果

夏のレーパンにジャージという格好に対して、冬の服装は97秒遅いようです。

ここまで見てくるとやはり服装が与えるスピードへの影響は大きいということを感じます。

動画

The Win Tunnel: Comparing Seasonal Kits