トライアスロンバイク(TTバイク)はロードバイクよりもどれくらい速いのか?スピードの違いまとめ

Frank Schleck - 2009 Tour of California

タイムトライアルやトライアスロンに興味がある人が自転車を探すときに一度必ず検討するのがTTバイク(以下トライアスロンバイクに統一)。

トライアスロンと各種のロードレース、コースによっては一部のシクロクロスまで幅広い競技で使えるロードバイクに比べ、トライアスロンとタイムトライアルにしか使用ができないのがトライアスロンバイク。

今人気のヒルクライムやクリテリウムにも興味がある、という人には断然ロードバイクのほうがおすすめですが、とにかくトライアスロンメインで競技をしたいという人にはトライアスロンバイクを選択することがスピードの面で大きなメリットがあります。

世界選手権などの国際舞台ではドラフティング(集団走行)が認められているため、選手は通常のロードバイク、もしくはエアロロードで集団を形成して走行しますが、一般的なトライアスロンの大会はほとんどドラフティングが禁止されているため、空気抵抗に優れたトライアスロンバイクはバイクのタイム短縮、スピードアップの大きな要因になります。

私自身は出場した全ての大会ではDHバー無しのロードバイクに、エアロ機材も一切用いない、ロードレースにそのまま出れる形で参加してきました。

一年目はオリンピックディスタンスを2回、それ以降はバイクレグでの獲得標高1500m以上のミドルとロングディスタンスを主に参加してきたので特にロードでも不満はありませんでしたが、やはりトライアスロンをやっているとトライアスロンバイクがどれだけ速いか耳にする機会があります。

空気抵抗に優れたトライアスロンバイクがロードバイクよりも速いことはわかっていますが、実際どれだけ早くなるのかはっきりした話を聞いたことは無かったので、ロードとトライアスロンバイクのスピードの違いを比較した内容をまとめてみました。

スペシャライズドのエンジニアが行った空洞、実走テストの驚きの結果

Specialized Transition Comp

まずはこちらの「エアロ機材はどれくらいエアロか?(How aero is aero?)」という記事。

スペシャライズドの空気力学エンジニアのマーク・コートとともに風洞実験で得たデータを基に、サーキットとヴェロドロームで得た実走データを紹介しています。使う機材はロードがスペシャライズド Tarmac SL2、トライアスロンバイクは同じくスペシャライズドのTransition。

実走ではマーク・コートが2つのバイクを元に異なる装備、クリップオンDHバーやエアロヘルメット着用など5つの異なる設定で、各テスト時に同一の条件下(風など)の中、時速40㎞で巡航すると機材・装備によってどれくらいのパワー出力の違いがあるかを検証しています。非常に興味深い結果がこちら。

Asheville Velodrome

まずはセットアップ、機材の設定内容です。

  • 【セットアップ】バイクの種類/ヘルメット/ハンドルポジション
  • 1:ロードバイク/ロードヘルメット/ドロップハンドル
  • 2:ロードバイク/ロードヘルメット/DHバー
  • 3:ロードバイク/エアロヘルメット/DHバー
  • 4:トライアスロンバイク/ロードヘルメット/エアロバー
  • 5:トライアスロンバイク/エアロヘルメット/エアロバー

こちらが、実走実験で得たデータです。

設定 CdA/前面の空気抵抗係数 時速(km) 出力パワー(ワット)
0.310 40.10 306.6
0.267 40.27 268.6
0.256 40.38 261.0
0.265 40.17 262.9
0.230 40.05 229.0

バイクとハンドルの種類だけでなく、空気抵抗が大きく掛かるヘルメットも通常のロードヘルメットとエアロヘルメットを使い分けた実験も行っています。

この結果を見て感じたのは、国内のオリンピックディスタンスの大会で一般的なクリップオンDHバーとロードバイクの組み合わせは、かなりパワー出力を抑えるのに役立っていることです。そしてトライアスロンバイクにエアロヘルメットの設定はそれ以上の大きなパワー出力の節約に役立っています。

巡航速度40㎞を維持するために300ワット以上の出力を1時間以上続けるのにはかなりの体力が要求されますが、230ワットでの巡航なら現実的な目標になりそうです。

空洞実験では278ワットで走ったところ、ロードバイク/ロードヘルメットの設定では時速40㎞だったのに対して、トライアスロンバイク/エアロヘルメットの場合は時速43.5㎞が出たようです。空洞実験の結果ですが、一時間ロードで40㎞も走れる上級サイクリストがエアロ機材を使用するとさらに3.5㎞も先まで走れてしまうんですね。

他にも空洞実験の結果表などためになる話が満載ですので、英文ですがぜひチェックしてみてください。

元の記事:How aero is aero?
http://www.bikeradar.com/road/gear/article/how-aero-is-aero-19273/

トライアスロンバイクのスピードの鍵はエアロポジション

triathlon

トライアスロンバイクのスピードの秘密はフレームの優れた空気抵抗性だけではなく、よりエアロダイナミックな姿勢を取ることが可能になったフレーム形状とエアロハンドルによる部分が大きいところ。

「時間稼ぎ~どのエアロ機材が効果が一番高いか~(Buying Time: Which Aero Equipment Offers the Most Benefits?)」で紹介されているテスト結果ではそんなエアロポジションの効果がよく分かる内容が。

40㎞を48分(時速50㎞)で走る選手を計測した結果、各エアロ機材には以下の時間短縮の効果があったようです。プロレベルの巡航スピードのため、通常のホビーサイクリストが同じエアロ機材を用いても効果はそこまで大きな差は出ないでしょうが、非常に興味深い内容です。

スキンスーツ/134秒

通常のロードのレースパンツ、サイクリングジャージという組み合わせからナイキの特別なスキンスーツ、ナイキスイフトスーツに装備を変えたところ、空洞実験の結果134秒のスピードアップに効果があったようです。

一般的に手に入りやすいスキンスーツで試して欲しいところですが、やはり着る物も大きな効果があるようです。トライアスロンウェアでもぜひ試して欲しいところです。

エアロポジション/122秒

ブルホーンハンドルで上体を起こして走る状態からエアロバーの先端を握ってエアロポジションで走る状態では122秒の短縮に効果があったようです。

エアロヘルメット/67秒

Aero Helmets

TT競技でよく目にするエイリアンのように後頭部部分が長く伸びる形状のエアロヘルメットは、通常のロードヘルメットよりも67秒の短縮に効果が。

あくまでも時速50㎞での巡航中のエアロ効果ですが、それでもトライアスロンバイクが可能にする前傾姿勢と少ない空気抵抗には大きな優位性を感じます。

元の記事:Buying Time: Which Aero Equipment Offers the Most Benefits?
http://www.active.com/cycling/Articles/Buying-Time-Which-Aero-Equipment-Offers-the-Most-Benefits.htm

実走でもやっぱりトライアスロンバイクは速い

Frostbite Time Trial 2015

最後はこちら「TTバイクは本当に速いのか?(Are TT Bikes Really Faster?)」。シアトルの自転車ショップ、サイクルユニバーシティーが地元のタイムトライアル大会で行った内容。

通常のTTの他にエアロ機材使用不可のレトロ部門の両方に異なる機材で出た選手の結果が紹介されています。

TT部門ではTTバイクにディープリムのZipp 808にヘルメットはエアロヘルメットのGiroアドバンテージ2、レトロ部門では一般的なロードホイールにヘルメットもロードヘルメットのBellスウィープRを着用。およそ14.5kmの同一コース、同じ選手、異なる機材で得た結果がこちらです。

機材 時間 出力パワー(ワット) 平均時速(km)
TTバイク 20分35秒 281 43
ロードバイク 22分20秒 285 39.5

レトロ部門ではわずかに風が強かったため、完全なる同一条件下というわけでは行きませんが、それでも実走テストとしては十分な同一条件の中で行うことが出来たようです。

結果はロードバイク、ロードヘルメット、ロードホイールの組み合わせではエアロ機材を選択した状態よりも4ワット高い出力を行っても時速はおよそ3.5㎞も落ちるようです。

280ワットでのぺダリングを一時間維持できるかはおいておいて、オリンピックディスタンスでトライアスロンバイクを使用してバイクフィニッシュした時に、ロードの装備であればおよそゴールから3キロの地点にいるイメージですね。

ロードバイク装備で出るよりトライアスロンバイクにエアロ機材を用いてトライアスロンに出るほうがどれだけ有利か感じさせられる結果ですね。

元の記事:Are TT Bikes Really Faster?
http://www.cycleu.com/are-tt-bikes-really-faster/

初心者にはロードバイクにDHバーとエアロヘルメットでも良いかも

ここまでロードバイクとトライアスロンバイクの違いを見てみると、トライアスロンバイクがスピード、空気抵抗面では圧倒的に有利だと思います。

しかし、求めやすい値段で市街地も走りやすく、チームやクラブの練習会やロードレースにも使えると言った使い勝手が万能なロードバイクにDHバーとエアロヘルメットを使用してトライアスロンの大会に参加するのも悪くないと思います。

トライアスロン一本で行くという決心があるならトライアスロンバイクが最適だと思いますが、幅広く自転車競技や自転車ライフを楽しむならロードバイクと言った感じですね。

DHバーは安いものでは一万円前後から、TTヘルメットなら2万円台からとそこまで大きくない出費でトライアスロン使用に変えられるため、初心者の方はまずはロードを買ってみるという選択肢が個人的にはおすすめです。

私の場合はロングのディスタンスの大会もロードジャージにロードヘルメット、DHバー無しのドロップハンドルというエアロ機材一切無しで出ていますが、トライアスロンは自分を高めるために出ているので、タイムも気にしはしますがそこまで大きな不満はありません。

まとめ

走行時の空気抵抗の8割以上はバイク機材ではなく自分自身の体にかかるなどと言われていますが、空気抵抗性に優れたポジションを可能にするトライアスロンバイクはその体にかかる空気抵抗を低くすることが可能なトライアスロンやTTに欠かせない重要な機材だと今回改めて感じました。

同様に頭にかかる空気抵抗の軽減に役立つヘルメットもスピードアップに大きく役立つ大切な要因だと理解できました。ロードバイクでもきちんとポジションを出して最適なヘルメットを用いることで巡航速度が上がりますし、レースでのアタックなどの単独走行時にも大きく役立ちそうです。

私の場合はロードレース、トライアスロン共に楽しんでいるので今持っているロードバイクに満足していますが、やはりトライアスロンを中心に競技がしたくてバイクを二台買う予定はないという人には断然トライアスロンバイクがおすすめです。

自分の脚力は変わらずとも、より速い速度での巡航が可能なトライアスロンバイクの魅力は非常に大きいですね。

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