自転車トラック競技のすすめ~カナダのベロドロームでトラック競技を始めて感じこと~

velodrome 04

2015年9月からカナダのバンクーバーに住み始めた、トライアスロンやロードレースが趣味のホビーサークリストの私。

バンクーバーは夏は降水量が少なく、日が長く、そして毎週のようにロードレースが開催されるサイクリスト天国な場所ですが、逆に11月~3月までの冬から初春にかけては日が短く、日本の梅雨のように毎日雨が降るという非常に住みづらく、サイクリングに向かない街です。

カナダでは夏はロードレーサーという人も、モントリオールやオタワなどの内陸で気温は常にマイナス10度以下、そして積雪の多いという場所に住んでいる人は、冬はクロスカントリースキーでトレーニングをしている人が一般的です。

しかし、バンクーバーのように近郊に屋内ベロドロームがあるという人たちは、冬はトラック競技で脚力を鍛え、テクニックを養うことが出来るという恵まれた環境があり、冬も自転車競技を楽しむことができます。

私がバンクーバーに越して来た時にはすでにロードレースシーズンが終わっていたので、マラソンのためのランニングと水泳、そして週1~2でベロドロームでレースをするというトレーニングサイクルが出来上がりました。

そんな、バーナビー・ベロドロームに通い始めて半年が経った今、私がベロドロームでトラック競技を始めて感じたこと、そのメリットを今回はご紹介したいと思います。

バーナビー・ベロドローム(Burnaby Velodrome)の紹介

Burnaby Velodrome Pano

現在カナダに3つある屋内ベロドーム。2015年パンアメリカン競技大会のために作られたトロント近郊のミルトン市「Mattamy National Cycling Centre」はベロドームとして世界水準のUCI規格の250mトラックが自慢ですが、残りの2つは曲者揃いと言った作りのトラックとして有名です。

カナダ・オンタリオ州ロンドンにある「Forest City Velodrome」は世界で最も短く、コーナーの傾斜がきついベロドロームとして有名です。その全長はわずか138m、コーナーの傾斜は50度、直線走路でさえも17度の傾斜というジェットコースターのようなトラックです。

バンクーバーの中心部、ダウンタウンから車でおよそ30分の距離にある、バーナビー・ベロドロームもそれに負けじと、木張りで全長200m、コーナーの傾斜は47度、直線走路は15度というトラックです。

バーナビー・ベロドロームのコーチの1人によれば、このベロドロームで走れれば世界中全てのベロドロームで走れる、というライディング・テクニックを養うのに理想的なベロドロームです。

冬は毎週のように繰り広げられる熱いレースシーン

バーナビー・ベロドロームでは夏はロードレース・シーズンのためイベントは少ないですが、10月以降の冬場はほぼ毎週金曜日の夜にフライデー・ナイト・レーシングと言うレースイベントが開催されます。

他にもアメリカのシアトルやポートランドからのトラック競技者も参加に来る、週末の金曜日から日曜日まで週末の3日間にわたって開催されるベア・ボーンズ・ウィークエンド。

TTイベントやスプリント・トーナメントなどレースイベントが充実しています。

バーナビー・ベロドロームを走りたくなったら

トラック経験者であれば、運営者に問い合わせればトレーニングセッションやレースへの参加が可能だと思います。日本のトップレベルのトラック競技者も走りに来たという話を聞きました。

初心者の方は計5回の初心者向けのセッションから始めることができます。

初心者に嬉しいトラックレーサー(競技用ピスト)の貸し出し

トラックレーサーを持っていなくても、1回10カナダドルで貸し出しができるため、初心者でも気軽に始めることが出来ます。

フィットネス派の人も利用している

ここまでの話だと競技思考のサイクリストしかいないトラックだと思ってしまいますが、フィットネス目的で通うピスト好きのサイクリスト達もいます。

自由に利用できるオープン・トラックや、体力やスピードの向上のための初心者から上級者向けのワークアウトも通常は週3ペースで開催しています。

レースを始めるまでに学んだこと

トラック経験の無い人がバーナビー・ベロドロームで競技を始めるには、初心者向けのラーニングセッションをまずは5回受けます。トラックの細かなルールや走り方、車間距離の取り方などを学びましたが、最も基本となる3つのルールがこちらです。

  • 常に時速30㎞以上で走る
  • 常にペダルを回す
  • 後方確認を忘れない

時速30㎞というのはこのトラックの基準で、コーナーの傾斜は47度のため時速30㎞未満の低速走行時では滑り落ちてしまうため、常に時速30㎞以上を維持する必要が。

そして、ロードバイクのようにフリーハブの自転車にしか乗ったことが無い人にとって、適応に時間が掛かるのが常にペダルを回すということ。

トラックレーサーはロードバイクと違ってハブが空転しないため、スプリント直後に気を緩めて足を止めると、ペダルが片側の足を突き上げてビンディングが外れたり、落車してしまったりと非常に危険な目に合います。私は2回それでビンディングの片側が外れたことがあります。

そして、一番大切なのは後方確認。英語ではショルダーチェックと言いますが、これはクラッシュ防止のためのかなりしつこく言われます。実際上位カテゴリでも後方確認をしないでラインを変えたことが原因で大きなクラッシュが起きているので、非常に重要な要素の1つです。

ラーニングセッションの後はレース講習

初心者向けのラーニングセッションの後は、レース講習としてコーチや上位カテゴリの選手と一緒に実戦形式のレースを行います。

私がやったのはスクラッチとエリミネーションだったと思います。

レース中からコーチのフィードバックを受けることができ、レース後も反省会のような形で良かったことや悪かったことを話し合います。トラック競技が初めての人には非常に参考になります。

メリット1:ぺダリング

トラックでレースを始めて気付いたのは、自分のぺダリングについてです。今までただケイデンスを95前後に保ってペダルを円形に回す、ということを何となく意識していただけの私。

レンタルのトラックレーサーは初心者向けのためギア比が軽く、スピードが上がるとすぐにケイデンスが上昇します。特にレース終盤残り5周となると、時速は50㎞を超す場合が多いので、ケイデンスが一気に上昇。

そんな高い負荷が掛かった状態でペダルを回すと、私のぺダリングが不安定なため、直線走路で後輪が一瞬浮いてしまうことが2~3度ありました。競輪選手のようにローラーでもハイケイデンスでスプリント出来るようなぺダリング技術が必要だと痛感した瞬間です。

そのため、ベロドロームにある3本ローラーに乗ったり、片手を背中に付けてトラックを走るというドリルをやったり、負荷調整のできるアリオンAL13という3本ローラーを購入したりと自分なりにぺダリングの改善に努めました。

メリット2:ライン取り

Off the Front

ベロドロームで走り始めて気付いたのは、自分のライン取りと理想的なライン取りの違いです。

トラックではスプリンタース・レーンと呼ばれる内側の黒と赤線に囲まれた部分があります。ベロドロームの周長はこの内側の黒い線の一周の長さのため、黒い線上を走るのが最も最短の距離です。

そのため、独走時やスプリント中などはコーナーでは黒い線ギリギリのラインを上手に保って走り続ける技術が必要になります。上手な選手ほど、この黒い線に近いラインを上手に取り続けることが出来ます。

コーナーの前後はわずかながら登り下りの傾斜がったり、一番内側の助走路は高速で突入するとスリップして落車してしまう恐れもあるため、見た目以上に真っ直ぐ走り続けるということが難しいと感じました。

ロードレースをする上でのライン取りやバイクコントロールの良い練習になると思います。

メリット3:車間距離

IMG_2855

ロードレースの経験があるのでドラフティングをしながら走ることはありましたが、トラックレーサーの場合はブレーキが付いていないためよりシビアな車間距離が求められると感じました。

クリテリウムのようなコーナーがあるわけではないので、減速と加速を繰り返したりはしませんが、トラックの外側を走ればコーナーの傾斜がより高く感じるため、わずかながらペースが落ちることがあります。

前走者が減速した場合、車間距離を詰めすぎているとブレーキが無いので突っ込み落車してしまうことがあるため、近すぎず遠すぎずの車間距離を常に取る必要があります。

私のようなロードレース初心者にはブレーキに頼りすぎずに車間距離を上手に取る、という良い練習になりました。

メリット4:自転車競技の戦略性を楽しむことが出来た

スクラッチ、スノーボール、エリミネーション、スプリント、アンノウン・ポイントレース、ポイント・ア・ラップなど様々な種目を通して競技をするごとに、戦略面での自転車競技の楽しさを知ることができました。

スノーボールや、ポイントレースなどポイントを多く集めた選手が勝つという競技では、最終ラップで最初にゴールした人が勝つというわけではありません。

序盤や中盤、全体の動きが激しくなる前に少しずつポイントを集めて勝利する、勝利をせずとも常に3位の位置を狙ってシーズンを通してポイントを得るなど、様々な戦略を立てることが出来ます。

(レースごとに上位の選手にはポイントが与えられ、カテゴリごとのランキングが付けられます)

アンノウン・ポイントレースという種目はどの周回がポイントラップとなるか分からないため、運と勘が必要になるという勝負師的な感覚も必要に。

レースごとの戦略、シーズンを通しての戦略、そしてその時の自分のコンディションや周りの選手との実力差を考慮しつつ、確実にシーズンポイントを得る走りを心がけるなど、今まで味わったことのない自転車競技の醍醐味に触れることができました。

メリット5:他のサイクリストとの交流

P1060051

ベロドロームに来て驚いたのは、様々なサイクリスト達がそこに集い小さなコミュニティーを築いていることです。

私のようなホビーサイクリストが大多数ですが、実力のある将来有望な地元のジュニア・ユース選手や、自転車以外の競技の元オリンピックやパラリンピック選手などナショナルレベルで活躍するアスリートがレースの日に集います。

そして、元プロや現MTB選手などの経験豊富なコーチ陣、地元の強豪サイクリングチームのメンバーなどと交流することで、サイクリストとしての自分自身を高めて行くことができる良い環境となっています。

まとめ

バーナビー・ベロドロームでトラック競技に出会い非常に良い経験が出来たと思っています。

元々は冬の自転車トレーニングの一環としてロードバイクに乗れないからと始めたトラック競技でしたが、通い詰めるほどその魅力に惹かれていきました。

非常に戦略的な競技でライディング・テクニックを養うことができ、レースに参加するだけでシーズンの成績がネットで簡単に見れ、自分のランクを確認できると言う、自転車競技にはまっている人には最高の環境です。

特に一対一のマッチスプリントや各ラップがポイントラップとなるスノーボールやポイント・ア・ラップなど、テレビで見るロードレースさながらの白熱した展開を私のようなホビーレーサーも毎週のように楽しめた、ということに大きな満足をしています。

日本には屋内ベロドロームは伊豆に1つあるだけですが、競輪場はたくさんあるので、バンク走行の機会があればぜひ一度試してみることをおすすめします。

コメント